秘め恋*story7~試着室で…~
「あの~…」
「あ、はい。」
店の奥で急な入荷リストに目を通していると、
裏口から声をかけられて少しビクッとしてしまう。
裏口に立っていたのは、いつも出入りしている配送の人だった。
青のストライプのポロシャツを来たいつもの…
「あれ、いつもの人じゃないんですね。」
「あ、金山はシフトの関係で、僕が代わりに」
「あ、そうなんですか。ご苦労様です。」
いつも日中来る配送のおじさんじゃなかった。
若い人で黒縁のメガネをかけて、俯いているせいか、長めの前髪が重たそうな雰囲気。
何かちょっと暗そうな人…
私もそうだから、人の事言えないんだけど。
「荷物、どこに運んだらいいですか?」
「あ、こちらにお願いします。」
滝本と名札を着けたその人は、私が指定した所に荷物を運び出した。
私も仕事に取りかかった。
その運ばれた商品を一つ一つ、リストと照らし合わせていく作業を始めた。
急な入荷のはずが結構な量だった。
それでもチェックがしやすかった。
なぜなら、
「あ、あの…伝票、揃えて下さってありがとうございます…助かります。」
地味に滝本さんの仕事の質がいいから。
「いえ、仕事ですから。」
「丁寧なお仕事ですね。見習います。」
私がポツポツ喋ると、作業をしていた手を止めて滝本さんは俯き加減に笑った。
いや、照れているようだった。
でも、素直にそう思った。
荷物を扱うときの丁寧さ、チェックしやすいように並べられた箱。
私ももっと丁寧な仕事をしよう。
そう改めて思い、作業を再開した。
ーーーーーー……
「あの、これどうぞ。」
「え、あ…すみません。」
作業が一段落すると、休憩しようと座った私に滝本さんがお茶の入ったペットボトルを差し出してくれた。
有りがたく受け取ると、滝本さんも少し離れたイスに腰掛けてお茶をゴクゴクと飲んでいた。
そんな姿を何故か私はじっと見ていた。