秘め恋*story7~試着室で…~
喉仏って、あんなに出てるんだ…
「あの…何でしょう…?」
じっと見ていたことに滝本さんが気づいた。
私は慌てたがらも、つい…
「あ、いえ、その…喉仏が…」
「喉仏…?」
「喉仏ってそんな風に動くんだなぁと思いまして…すみません、あまり男の人に慣れてないもので…」
私、何を言ってるんだろう。
恥ずかしくなって、俯いた。
滝本さん、変な人だと思ってるよ。
「高田さんて…すごく真面目な方ですね。」
「え?」
急に言われて、ビックリして顔を上げる。
「見ててもすごく丁寧に仕事しておられるし、配送の僕にも丁寧に接して下さるので…」
「真面目くらいしか取り柄がないですし…他の人みたいに見た目も華やかじゃないので…」
「そんなこと無いですよ。」
配送のお兄さん相手に何でこんな話してるんだろう私。
「こんなだから、彼氏もいないし…本当は今夜も一人で映画を観ようと思ってたくらいで。
ある意味、残業になって良かったですよ。」
「……」
あぁ、滝本さん、困ってる。
私はこんなだから、いつも裏方なんだよなぁ。
私は立ち上がって、
「ごめんなさい、変な話してしまって。
後、チェックだけなので大丈夫ですよ。
お疲れ様でした。」
黙ったまま、手元のペットボトルを見つめてる滝本さんに一言謝ってそう言うと私は残りのチェックに戻った。
それから、滝本さんは“お疲れ様でした。”と言って、配送車に乗って帰っていった。
私は作業を終えて、夜の12時を回る手前に会社を出た。