秘め恋*story7~試着室で…~




あの残業の日からというもの、昼間の配送で滝本さんに会うことが増えた。



相変わらず、メガネをきっちりかけて前髪を下ろして俯き加減の滝本さん。



それでも私に気づくと、ぽつりぽつりと世間話をするようになった。





「今日も暑いですね。」



「そうですね。」




そんな他愛もない会話。


それでも私は何だか嬉しくなった。


職場でちょっとした会話ができる人が出来たんだ。


そんな些細なことが最近の私の楽しみになっていた。




「高田さん、髪…切られました?」



「あ、はい…少し。」



「…いいと思います。」



「あ、ありがとうございます…。」




そんな少し砕けた話が出来るようになった頃のある日…




「ちょっと!そこの配送!」




お局の中村さんのガミガミ声が裏から聞こえてきた。


店の奥へ続くドアを開けて覗いてみると、腕組みして今からお説教が始まりますとでも言うような中村さんと、




「は、はい。何ですか?」




すでに叱られた後のように俯き加減の滝本さん。



うわぁ…何があったんだろ。


私は気になって聞き耳を立てていた。




「ここに荷物を置かないでよ!
躓いたら危ないじゃない!」



「す、すみません。でも…」



「でもじゃないでしょ!早く別のところに移動させなさいよ!」



「でも、」




どうやら、商品の入った荷物を置いた場所が中村さんの気に食わなかったらしい。



でも、確か…




「あの~…」




私はつい、険悪な2人の間に入っていってしまった。




「何?高田さん。」



「その、その荷物…チーフが直接チェックされるみたいで…その場所に置いておいてくれと伝言がありました…」




私が恐る恐るそう言うと、中村さんの表情が一瞬強ばったけど“あら、そう。”とだけ言って、プンスカ歩いて店の方へ出ていってしまった。



朝のミーティングの時、チーフの話を中村さんは聞いてなかったらしい。




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