秘め恋*story7~試着室で…~
「あの、ありがとうございます、
助かりました。」
そう言って頭を下げた滝本さんに私は慌てて、
「いえ、そんな。滝本さんは悪くなかったんですから…こっちのミスなのに、あんな風に怒鳴ってしまって…すみません。」
悪いのは、店のスタッフの方だ。
それなのに、配送が悪いと怒鳴るなんて…
「何で高田さんが謝るんですか?」
「だって…こちら側のミスなので、謝るのは当然です。」
「高田さんのミスじゃないのに…?」
「スタッフのミスは、スタッフ全員でカバーしないといけませんから。」
そう。連帯責任って大切なことだと思う。
同じ職場で働くものとして。
すると、滝本さんは少し笑った。
あ…初めて笑ったところを見た気がする。
「高田さん、やっぱり真面目ですね。」
「それしか取り柄がないので…」
「いえ…優しい所も取り柄です。」
「え、」
不意に言われた言葉に驚いていると、滝本さんは“では”と、すぐ帰っていった。
私はその場でぽーっとしてしまった。
そんなこと言われたの初めてだったから…。
滝本さんだって…優しい。
彼の控えめだけど優しいし、真面目なところが何となく私の心をキュンとさせた。