君が笑うなら。。。
教室には日比野1人、誰の助けも借りれない状態。

日比野「こういうときに神田がいればなぁ。」

神田は学年内でもトップ10に入るほどの秀才である。

日比野「しかし何でゲームしかしてないのに頭いいのやら。」

ちなみにかなりのゲーマーである。
どうでもいいことばかり考えていると誰かが教室に入ってきた。どうやらクラスの女子のようだ。

日比野(ん?こんな女子いたっけか?)

見たことのない顔のようだ。しかし見立めはとても美人でクラスにいたら話題になりそうな女子だった。

女子生徒は日比野の存在にまったく気付いていないようでそのまま窓際の席に向かって歩いていく。

日比野「ん?そこの席って・・・」

その席は忘れもしない朝の罰ゲームが執り行われた席であった。

日比野「えっ!?まさか杉浦!」

驚きのあまりに大声をだしてしまった。ビクッと反応する女子生徒。日比野はとっさに口を押さえる。
その大声に初めて教室に人がいることに気づく。

杉浦「えっ?日比野くん?」
日比野「お、おう・・・」

気まずそうに返事をする。
どうやら本当に杉浦のようだ。

日比野(ヤベェーどうしよう・・・)

冷や汗がまたもや流れだす。
杉浦は目を細め、じっと日比野の方向を
見つめている。気まずい沈黙が続く。

杉浦「・・・なにしてんの?」

沈黙を破るかのように問いかける。

日比野「あ、いやさ、数学の課題を・・・」
杉浦「え?数学の課題って今日でてたっけ?」

目を細めたまま、またも問いかける。

日比野「今日はでてないよ、俺がただ単に昨日の課題をやってなかっただけ。」
杉浦「ふ~ん。」

そう言うと杉浦は目線を自分の席に戻し机の中からいつも読んでいる本を取り出す。
そして、そのまま教室を後にしようと入り口に向かう。

日比野「あ、杉浦!!」

思わず呼び止めた。理由は簡単だ。

杉浦「ん?」
日比野「良かったらこの問題の解き方教えてくんない?」

そう、あわよくば教えてもらえないかと考えたのだ。しかし朝の罰ゲームの件があるのであまり期待はしていなかった。

杉浦は日比野の席に向かい歩いて行く。
席にたどりつくと胸ポケットからメガネを出し、日比野の課題をみはじめた。

杉浦「こんな簡単な問題も分からないの?」

予想通りの皮肉であった。

日比野「んなっ、悪かったなぁ頭が・・・」
杉浦「教科書。」

日比野の言葉を遮りポツリと言った。

日比野「えっ?」
杉浦「だから教科書。」
日比野「えっと・・・」
杉浦「数学の教科書。20ページ開いて。」

日比野はようやく察したようで教科書を取りだしページを開く。

杉浦「ここにのってる公式あるでしょ?これを使って。」
日比野「あ、あぁ。」

予想外の出来事に驚きながらも言われた通りに公式を当てはめる。

日比野「当てはめたけど・・・」
杉浦「そこからちゃんと計算してみて。あとはかけ算とわり算をするだけよ。」

杉浦は少しイラついた様子で応える。
日比野は言われた通りに計算する。

日比野「おっ!解けた!」

初めてまともに数学の問題を解けたと喜ぶ日比野。

杉浦「この前の授業のなかでやってたでしょ?聞いてなかったの?」
日比野「いや、聞いてはいたけどなんか分かんなくてさ。」
杉浦「分からないならちゃんと教科書くらい読んでみたら。数学なんて教科書見てたら答えを書き写すようなもんよ。」

バカにしたように言う杉浦。
それに少しムッとした日比野。

日比野「なんだよ偉そうに。」
杉浦「なに?教えてあげたんだけど?」

実際その通りでなにも言えない日比野。

日比野「ぐぅ・・・そだな、ありがとう。」
杉浦「えっ?割りと素直!」
日比野「なにそれ!お礼言ったのにその反応!?」

素直にお礼を言われたことに驚く杉浦。

杉浦「えっ?お礼なんて人に言ったことないでしょ?日比野くん。」
日比野「俺は杉浦の中でどんな扱いなんだよ・・・」
杉浦「・・・そんな人?」
日比野「疑問視!!しかもそこ俺に聞くとこじゃないよな!」

思わず突っ込む。すると杉浦はクスッと笑った。

杉浦「ふふ、日比野くんって意外にいじられキャラなのかな?」

問いかけられたが、そんなことよりも日比野は杉浦が笑ったことに驚いていた。

杉浦「ん?日比野くん?」
日比野「ん・・・あ、いやごめん。えっとなんだったっけ?」

驚きのあまり質問をされていることに気付いていなかった。

杉浦「はぁ、相変わらず話聞いてないなぁ、もう。」

ため息を少しつく。

杉浦「それじゃ、課題、頑張ってね。」

そう言うと杉浦は教室を後にした。
日比野は1人になった教室でふと思った。

日比野(杉浦・・・笑えるんだ。)

日比野の頭には杉浦の笑顔が焼き付いていた。
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