怖い短編集
人影と車が衝突したときの

車のスピードは、

時速五十キロ以上であったと

私は思う。








人間と鉄の塊が、

時速五十キロで衝突したとき、

人間が無事でいられるとは

私には思えなかった。








〈 早く救急車を呼んで、

この人を病院に

連れていかなくては…… 〉








私はそう思い、

バックを手に取って、

携帯電話を取り出そうとしたが、

もう一人の冷静な自分が

私に救急車を呼ぶことを

ためらわせた。








私は、お酒を飲んでいた。








そんなことは、

私を見れば、

調べずともわかってしまう。







私はすでに犯罪者……。






私が車でひいてしまった人が、

助かっても、

助からなくても……。
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