怖い短編集

「大丈夫だよ。


僕、家に帰らなくちゃ……」




僕はそう言って、
痛むお腹を押さえながら、
ゆっくりとブランコから
立ち上がった。




僕の頭の中に
大嫌いな父と母の顔が浮かんで、
吐き気がした。




僕は今日も
あの人たちと
同じ部屋の中で
怒声を浴び、
殴られ、
蹴られるのだろうか?




フラフラと
僕が家に向かって、
歩き始めると、
僕の後ろの方から
右頬にアザがある女の子の声が聞こえた。




「大丈夫なの?」




僕は、
右頬にアザがある女の子が
僕のことを
本当に心配してくれていることがわかった。




「ねぇ、本当に大丈夫?


家まで帰れるの?」




僕は後ろの方から、
右頬にアザがある女の子の声が
聞こえていたが、
聞こえないフリをして、
そのまま歩き続けた。
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