怖い短編集
僕は明日香にもらった貝殻が入った箱を
両手で大切に持ち、
ゆっくりとブランコから立ち上がった。
「明日香ちゃん、僕、この貝殻を明日香ちゃんだと思って、
大切にするね。
それじゃ、僕は家に帰らなくちゃ……」
僕はそう言うと、
お腹がキリキリと痛んで、
下を向いた。
僕の頭の中に、
大嫌いな父と母の顔が浮かんで、
僕は憂うつになった。
どうして僕は、
あの家に生まれてしまったのだろう?
「徹くん、明日もこの公園のブランコで会おうね」
下を向いていた僕の耳に、
明日香の声が聞こえてきて、
僕はそっと頭を上げ、
明日香を見つめた。