怖い短編集
一家心中とい明日香の言葉に、
僕はドキリとさせられ、
明日香の顔を覗き込んだ。
「僕もその言葉は知っているけど、
でも、どうして?」
「徹くん、
大人って、本当に理不尽で、
つらいことがあると逃げ出そうとするの。
私の親は、
闇雲に借金を重ねて、
それで返せなくなって、
毎日塞ぎこんで、
弱い私を殴るの」
僕は、つらそうに下を向いている明日香が、
かわいそうになった。
明日香は僕と同じように、
もしかしたら僕以上に
つらい思いをしているかもしれなかった。
「大人は現実が
あまりにつらくて苦しいと
死んでしまおうと考えるのよ。
それでね……」
明日香はそう言って、
私の顔に目をやった。