怖い短編集
父が母の髪をむしるように掴み、
悲鳴を上げる母を
そのまま食器棚の方へ投げ飛ばすと、
母が激しく食器棚にぶつかった拍子に、
食器棚の食器が次々と落ちてきて
フローリングの床の上に
音を立てて砕け散った。
父は、
砕け散った食器の破片に囲まれた母を見下ろすと
母に怒声を浴びせた。
「死ねばいいのにだと!
ふざけた口をききやがって!
そう思うなら、
オレを殺してみろ!
その前に、
オレがお前を
動けなくなるほどに
叩きのめしてやるけどな!」
母は不意に床についてしまった手のひらを
食器の破片で
切ってしまった。
母の右手からは、
真っ赤な血が止めどなく流れ、
フローリングの床を
赤く染めた。