怖い短編集

僕はブランコに座り、
うなだれながら、
泣き出しそうなのを
じっとこらえていた。




どうして僕は、
あの家に生まれてきたのだろう。




幸せな人だって
たくさんいるのに。




愛されている人だって
たくさんいるのに。




それなのに
僕は……。




「徹くん、
どうしてみんなが周りの人に対して
優しい気持ちになれないのかしら?


みんなが相手を思いやれれば、
きっとみんなが
幸せになれるのに」




僕は、そう言った明日香の顔を見た。




「そうだよね。


みんなが優しい気持ちになれれば、
きっとみんな幸せになれるのにね。


みんなが優しい気持ちになれれば、
きっと僕みたいな子なんて……、
ど、どこにも……」




僕はそこまで言うと、
こらえていた涙が
次から次へと溢れ出してきて
止まらなかった。




みんなが幸せになれる方法なんて
僕にだってわかっている。




それなのに、
どうして幸せになれるはずの方向には向かわずに、
反対の方向にばかり
僕の両親は
進もうとするのだろうか?




傷つけあい、
罵りあい、
憎しみあい、
気づけば二人ともが
不幸せになっていた。




どうすればいいのかなんて、
僕にだってわかっている。




それなのに……。
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