君と私の物語
「ただいま」

しーんっと静まり返った家の中。

「ただいま」という言葉を返してくれる人なんていない。

だけど、もしかしたらって期待してる自分がどこかにいる。

そんな自分がつくづく嫌になる。そんな時ガチャっと音がした。

「あら、帰ってたのね」

「あ、うん、、」

「じゃあ、これ今月分ね。足りるわよね?お母さん忙しいからもう行くわね。愛斗の所へすぐ に、戻らなくちゃいけないのよ。唯はしっかりしてるから大丈夫よね、お母さん唯の事は何 も心配してないわ」

そう言うと、お母さんはまたいなくなってしまった。

渡された生活費の5万円。

普通の子は、大金をもらったと喜ぶだろう。

だけど、私はお金を渡されるたびに心が痛くなる、、、苦しくなる、、泣きだしそうになる。

こんなお金なんていらない。

だから、また一度だけでもいいからお母さんの作ったご飯が食べたい。

もう何年食べてないだろう、、、。

そんな事を考えていると泣けてくる。

だめだ、だめだ、泣いたらだめだ。

苦しいのは、私じゃない、、、苦しいのは、病気と闘ってる愛斗なんだから。

そう思っても、止まらない涙。

大丈夫、大丈夫、私は大丈夫そう自分に言い聞かせる。

思い込ませる、そうでもしないと今にも心が折れそうだから。
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