笑う門には福来たる!!
それは、夕焼けが空を赤く染めた日のこと


「はい!ここで、解散!!お疲れ様!!」



夜の巡察を終え、門限まで少し時間があるので現地解散した

辺りは、すっかり暗くなり

見上げれば、月の姿

それでも、明るく照らしてくれるわけではなく

静かに見守っているようだった


ふと、橋の上に人影を見つけた沖田


引き寄せられるように、橋へ


〝誠十郎さん?〟


川面を見つめ、何やら物思いに耽っている

迷ったが、声を掛けた


「どうしたのですか?何かありました?」

「沖田さん… 巡察の帰りですか
ちょっと…考え事です
気にしないで下さい」

気にするなと言われても、すでに気になっている


「送りましょう」

「いいですよ…護身程度、戦えますし」

「僕と歩くの嫌?」

「え?そんな!!悪いなって…」

「じゃあ、送るね!!」

「あ…ありがとうございます」

「誠十郎さんは、したいこととかあるの?
仕立て辞めて、どうするのかなって
興味本位で… 言いたくなければいいから」

「沖田さん…俺、年下なんで、さんは
辞めてください」

「一つしか変わらないし、僕も総司でいいよ!?」

「いやいや!!悪いよ!!」

「芹沢さんには、馬鹿馬鹿言ってるのに
僕は、悪いの?」

「なんか… 沖田さん、技持ってますね」

「総司って呼んで下さいね!!」

「総司さん」

「うわっ…他人行儀」

「総司!!」

やけくそ気味に、誠十郎が呼ぶ


「なぁに?誠十郎?」

「照れますね…」

照れてても、口元が緩まないのかと

落胆する沖田


「僕、誠十郎を笑わせてあげるよ!
絶対!!笑わせてみせます!! 」



「期待します」

 

「うん!期待しててねぇ!!」




決して油断などしない

沖田には、隙がない


だけど、その日は少し油断したのかもしれない


「総司!!危ない!!」


ドンと誠十郎に突き飛ばされて

壁にぶつかる

すぐに抜刀して、誠十郎に斬りかかろうとする者を斬った


「誠十郎!!大丈夫?」


「平気ですよ」


月明かりに照らされた誠十郎


「怪我してるじゃないか!!」

「これくらい平気ですって!!」

「ダメ!!屯所においで!!
最近、医者みたいな人が入ってね!!
ちょっと…いや、ずいぶん変わった人だけど、見てもらおう!!」

「いいですって!!」

「もう!!頑固なんだから!!」

芹沢のように、誠十郎を軽々と担ぎ

「はい、行きますよ!!」

「下ろせぇ~!!」


誠十郎の声を無視して、屯所に連れて来た



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