笑う門には福来たる!!
「ひぃ…うちは、手一杯で…
申し訳ありません…お断り致します!!」


壬生浪士組 という名前を出した故に

店番の男が怯えている


「そこをなんとか、お願い致します!!
どうしても腕のいい方に仕立てて貰いたいんです!!」


沖田は、一生懸命にお願いした


「僕の為に、近藤さんがお金を出して下さったんです!!
特別な着物なんです!!」


「よろしく頼む!!」


沖田の熱意に、土方も後押しする



「ここここ困りますよぉ~
帰って下さい!!」





「この店は、いつから客を選ぶようになったんだ?」





気配に敏感な二人は、後ろに立たれたことに、気づかなかった

突然の声に後ろを振り返る



「誠十郎さん!!私は、別に……

仕立てする者の手が空いていないのは
本当です!!」



八木に、跡取り息子 誠十郎の名を聞いていた、二人は驚いた

話に聞いたとおりの女顔だった


「待たせればいいだろう?」


「待たれても、困りますよ!
そんなに、言うなら、誠十郎さんが仕立てたらいいじゃないですか!!」


誠十郎が沖田の方に目線をやる


「他の店を紹介しようか?」


「特別な着物なんです
八木さんが、ここを薦めてくれたので
ここじゃなきゃ、駄目なんです」


「……特別ねぇ」


大袈裟な男だな 

と、誠十郎は呆れた

呆れたが

この男を羨ましく思った




「急ぐのか?」

「いえ、急ぎません」

「予算は?」

「え? 二両です」

「生地や柄を任せてくれるなら、羽織もつけてやる」

「作ってくれるんですか!?」

「いいよ」

「わぁ!!ありがとうございます!!」

沖田は、勢い良く誠十郎の前に立ち、手を握る

「特別な着物です!とても嬉しいです!」


「寸法測るぞ」


そう言ってから、沖田の手をほどき

手で採寸しはじめた


紙に書き込みをするわけでもなく

適当に見える為、土方が眉間に皺を寄せる


「誠十郎さんが……仕立てをするなんて
これは、一大事です!!
旦那様~!!誠十郎さんがぁ!!」


店番の男が、バタバタと奥に走る

予想していたからか、気にも止めず

しばらくして、採寸を終えた


「出来上がったら、届ける
壬生浪士組だっけ?」


誠十郎の言葉で、最初から後ろにいて

話を聞いていたと理解する


「お前…… 今更、仕立てをするだと?」


誠十郎の父親が、立っていた


「個人的に受けた仕事だ
この店に関係ないでしょう?
八木さんの紹介ですし」


「八木さんの…」


「そういうことだから
出来上がったら、こちらから行く
じゃあな」


ヒラッと手をあげて家の中に入って行った

土方、沖田は、店の主人に

頭を下げ、店を出た


「本当に笑わない方でしたね!?」

「笑うとこがなかっただろうが!!
俺だって、笑ってねぇよ」

「あれ?僕は、笑いましたよ!!」

「評判の腕利きに、仕立てして貰えるなんて、ついてるな?総司!!」

「はい!!凄く楽しみです!!」




面倒くさくなった土方は、沖田を煽てて
会話を終わらせた







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