笑う門には福来たる!!
何度、通って説得しても、帰らないと
突っぱねる

「このまま太夫として生きるの?」

沖田が聞くと

「さぁ」


口数も減ったなと、土方が心配する


「まぁ、君菊みたいな別嬪は、中々いねぇ
人気があるのはいいが、バレるなよ?」

「太夫ゆうんは、芸を売るんどす
着物を脱ぐことは、あらしまへん」

「この前みたいに襲われたら、大変だよ?」

「そうだ!気をつけろよ?」

「へぇ」








腹を割って話せない…


そう思い、夜ではなく昼に置屋を訪ねることにした


「君菊やったら、お師匠さんとこや」


教えて貰った家に行くと



バリーン パキン


誠十郎に戻って、薪割りをしていた

「なに?」


素っ気ない態度に、土方の胸がジクリと
痛んだ


「誠十郎、いい加減にしろよ!
皆、心配してんだぞ!!!
お前の母親は、寝込んでるんだぞ!!」

「お父上も、誠十郎の友達を訪ねて回っているよ?」

「うっせぇなぁ…わかったよ…
帰りゃ良いんだな」



薪割りを終え、帰り支度をする

「誠十郎、ありがとうね!」

「いいえ」

「ご両親によろしくね!」

「はい」













「で?なんで、ついてくんだ?」

「おめぇがちゃんと帰るか、心配だから」

「僕は、話したいから」









店の前まで来ると、誠十郎が言った


「もう、関わらないでくれないか
この店にも、俺にも」



店に入って行く、誠十郎に声を掛けることも出来ず、立ち尽くす



「そう言われてもなぁ…」

「そうですよねぇ…」



放っておけないと、ため息漏らす



店の中からは、店番の大声が聞こえる


「旦那様~!!!
誠十郎さんがお戻りです!!」





翌日



やはり、誠十郎が気になる二人が

中垣呉服を訪ねると


「昨夜、誠十郎がもうここには帰らないと言いまして…
ついかぁっとなり、私も帰って来るなと
怒鳴りつけまして…
どこに行くやも、聞きそびれ…
妻には、体を大事にするように
藤十郎には、すまないと謝って
今朝、荷物を持って出て行ったんです」




予想通りだと、二人が目を合わせ

父親に挨拶をして

店を後にした










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