王子な秘書とシンデレラな御曹司
傷だらけの従者
「ご結婚ですか?」
自分の声が遠く聞こえる。
「やっと決まりました。雅さんのサポートのおかげです。これで後継者問題も一歩リードです。今までありがとう」
副社長は淡々と私にそう告げた。
「雅さんも春には総務に無事帰れますよ。よかったですね」
頭の中がまっ白になる。
昨夜の事は夢?
ドレス着て食事して踊って
優しく抱かれたのは
夢?
愛してるって言葉も夢?
やだ……身体中が震えてきた。
そうだよ
これが私の最終目標だったはず。
お祝いの言葉を言わなきゃ……。
「お……おめで……とうございます」
声が震えて上手に言えない。
「雅さん?」
「あの……お似合いです。華子様は副社長の事を……その、あんな風でもきっと大切に想っていると思い……ます」
目の前の副社長が揺らいでる
どうしたんだろ
あ……涙が出てるんだ私。
「雅さん」
「嬉し泣きですねこれ。あ、本当に……」
止まらない。
涙が止まらない。
「お先に失礼します」
逃げるように私はその場から走り
ただ泣いた。
泣いて泣いて
これでもかってくらい泣いた
天国から突き落とされた
クリスマスの夜。