突発性恋患い
一瞬、いや刹那ともいう間、私は目を見開き、彼に見惚れていた。
頭なんて働かない。熱を持って動きやしない。
蜂蜜色の瞳に、きっちりとした制服。黒く靡く髪に高く細身な身体。
なんて美しい人だろうか。自分でもらしくないと思う。
…多分、私と同じクラスに入る転校生だろう。
やっとで考えた結論は当たっているだろうか。
話を戻し、彼も大きな目を見開いて驚いていた。
それもそうだ。こんな朝早くに教室に居る生徒なんて、予想していないだろう。
「お、おはようございます。」
咄嗟に挨拶はしてみたが、声は震えていないだろうか。
「…お、おはよう。」
ほんの数秒後、彼は小さな声で挨拶を返してくれた。
多分、人生でこれ程緊張する挨拶は、そうそう無いと思う。