落ちてきた天使
「とりあえず飲み物頼もう。な?」



私達を宥めるように言う中垣さん。


明らかに気を遣わせちゃってる。
私さえ来なければ楽しいお酒の席になってたはずなのに。



「私、帰ります」



中垣さんに申し訳なくなって席を立つと、中垣さんが「え?ちょっと彩ちゃん?」と慌てだす。



「皐月、とにかく謝れって」

「何で俺が」

「今のは明らかにお前が大人気ないだろ。いくら離れたくないからって、彩ちゃんの意見を尊重しろよ」



中垣さんの言う通りだよ。


大人気なさすぎ。
人の話を聞かなすぎ。
優しい所もあるけど、傲慢過ぎ!



ちらりと皐月に目をやる。
だけど、目が合うなりふいっと視線を逸らされて、私のムカつき度が限界に達した。



「もういい!さようなら」



もうヤダ。
今日中に荷物まとめて出て行こう。


皐月がここまで子供だと思わなかった。



乱暴にカバンを持って店を出ると、外はすっかり暗くなってた。


駅前なだけあってネオンで明るく人気もあるけど、ガラが悪そうな人ばかりで少し怖い。



「皐月の馬鹿……追い掛けても来ないじゃない」



私が店を出るとき、引き止めだってしなかった。



何が“一人に出来ない”よ。


こんな夜に、こんな繁華街を一人で帰らせるくせに……




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