落ちてきた天使
別に引き止めてほしかったわけでも、追い掛けて来てほしいわけでもないけどさ。



「私、なんでこんなに寂しくなってんだろ……」



一人なんて慣れっこ。
私のこれまでの人生、最後には必ず一人になってた。


一人の寂しさなんて、とっくの昔に忘れたはずなのに。



今隣りに皐月がいない。


それだけで、こんなにも胸がギュッと苦しくなるなんてーーー。




「馬鹿らし……帰ろ」



息を吐いて呟く。
トボトボと背中を丸めて歩き始めると、店から数メートル離れた所でドアがガラガラっと勢い良く開いて、私は咄嗟に振り返った。



「ーーーっ、中垣さん」

「彩ちゃん!まだ近くにいて良かった」



中垣さんはホッとした表情を見せると、お店のドアを後ろ手に閉めて私に駆け寄ってくる。



「ごめん、皐月じゃなくて」

「え?」

「振り返った時、すっげ嬉しそうな顔だった」



嬉しそうだった?私が?


まさか……なんで私が嬉しそうにしなきゃならないのよ。





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