落ちてきた天使
認めたら駄目。


隠し通さないと。気付かないフリをしないと、また不幸が繰り返される。



ーーー皐月だけは、失いたくない。




「彩ちゃんがこの町に帰ってくるって知った時の皐月の顔、彩ちゃんにも見せてやりたかったな」

「どんな顔してたんですか?」

「すんげぇ嬉しそうな顔してた。あんな皐月、久しく見てなかったからビックリしたわ」



その時を思い出してククッと笑うと、中垣さんは話を続けた。



「皐月のやつ、制服持って帰って来ただろ?」

「はい。偶然まだ制服持ってる同級生と会って貰ったって」

「皐月らしい誤魔化し方だな。あいつ、必死に探し回ってたよ」

「え?探し回ってたって?」

「本当は新品をあげたかったらしいんだけど、新品注文すると彩ちゃんの初登校までに間に合わないからさ。同級生や後輩に連絡しまくってやっと後輩の後輩で譲ってくれる奴が見つかったんだよ」



後輩の後輩って、皐月から見たら全く知らない人ってこと?


皐月は私が転入した高校の出身じゃないからそれほど伝なんてないだろうし、後輩にまで頼んでまだ持ってる人を探し出すのは相当苦労したはず。


仕事だってあるのに。



「なんでそんなに優しいの……」



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