落ちてきた天使
よしよし、と私の頭を撫でてくれる施設長。
私より低いその肩に額を乗せて子供のようにむせび泣いた。




暫くして、私が落ち着くと施設長が「それはそうと」と口を開いた。



「無事に会えたみたいで良かったわ」

「え?会えたって?」



無事に会えたっていうのは多分お手伝いさんのことで、さっき言ってた皐月って人がそうなんだと思うんだけど。


私はまだお手伝いさんと会えてない。


涙が乾きかけた目元を拭いながら辺りを見渡すも、それらしき人はいない。


いるのは警察や救急隊、それと恐らくアパートの住人達に野次馬。


それから何故か公園から私についてきた失礼な無神経男と私と施設長だ。



「まだお会いしてませんよ?」

「ふふ。何言ってるの。ここにいるじゃない」



ここにいる……?ってまさか…


施設長の視線の先を恐る恐る辿る。
その行き着く先にある不敵な笑みに目を大きく見開いた。




「ちゃんと会えたみたいで良かったわ。皐月君」



施設長が無神経男ににっこりと笑顔を向けた。


皐月君と呼ばれたのは間違いなく失礼な無神経男で、奴もまた施設長に頷いて見せる。



「施設長……この人がお手伝い、さん?」

「そうよ。松永皐月君。少しの間だったけど、彩ちゃんと同じ時期に施設にいたのよ?」



施設長は「覚えてない?」と皺を寄せて微笑んだ。


私と無神経男の間に流れる異様な空気を微塵も感じることなく。





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