落ちてきた天使
ちらっと隣りで横になる皐月を盗み見る。


自分を止められる自信がないって言ってたのに、皐月ったらあっさり寝ちゃうなんて。


もしかして、目を閉じたらすぐにどんな状況でも寝れるタイプ?


それとも、私に歯止めが効かなくなりそうなぐらいの魅力がなかった?
同じベッドで眠るだけでも緊張してたのは、案外私だけだったのかも……



自分で考えといて悲しくなる。


馬鹿みたい。
これ以上、馬鹿な考えで落ち込む前に私も眠ってしまおうと瞼を閉じた時。



「寝れない?」



隣りから布団が擦れた音とまろやかな声が聞こえて、皐月の方へ顔を向けた。


薄暗い部屋の中、私を見つめる黒い瞳にとくんと胸が鳴る。


さっきまで仰向けだったはずなのに、手は繋がれたまま体は私に向けられていて距離が近い。


皐月には何度も見つめられているのに、ベッドの中だとやけに緊張する。いつもとは違う緊張感だ。



「寝たのかと……思った」

「体が勝手に襲わないうちに寝ようと思ったけど無理だった」



そう言って、苦笑する皐月。
私だけが意識してたわけじゃなくて皐月もそうだったんだと思うと、何だか擽ったい気持ちになった。






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