落ちてきた天使
「彩が寝れるまで話をしようか」

「私は夏休みだからいいけど、皐月は明日も仕事なのにいいの?」

「つーか、その方が俺も気が紛れるし」

「あ、じゃあ私、自分の部屋戻るよ。だから皐月はゆっくりと寝て?」



私の我が儘のせいで皐月が寝不足になったらどうするの。


一緒にいたいけど、皐月の体調に支障をきたす恐れがあるのにすることじゃない。


上半身を起こしてベッドから出ようとすると。



「ーーーうわっ!」



繋がれたままの手を思いっきり引っ張られて、私の体は見事に皐月の腕の中に収まった。




「どこ行くんだよ」

「っ……ど、どこって……へへ、部屋に…」



突然訪れた温もりに走り出す鼓動。


頭の下には皐月の逞しい腕。
布団越しに腰に当たる手。


目の前には綺麗な瞳とキスを思い出させる艶やかな唇。


平常心でいられるわけがない。
舌もうまく回らないし、真っ直ぐに皐月を見れない。


それでも皐月は、御構い無しに私を真摯な眼差しで見つめてくる。



「俺から離れる気?」

「そうじゃなくてっ……わ、私がいたら、ゆっくり眠れない……でしょ?」

「何もわかってねぇな。少しでも俺がお前を離すわけないだろ?」



そう言って、額に柔らかなキスを落とすと、皐月は私をきつく抱き寄せた。






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