落ちてきた天使
「花火大会に一緒に行きたいの」



大丈夫、皐月はきっとオッケーしてくれる。


そう言い聞かせてドギマギしながらも言葉にすると、皐月は「何だ、そんなことか」と笑った。



「いいよ」

「え⁈いいの?本当に?」

「ハハ。そんな驚くことか?」



驚いたというよりも、初めて自分からデートに誘ってオッケー貰えたことが嬉しくてつい大きな声を出してしまった。


しかも、笑顔で。一秒の間も無くすぐに。



「その日、仕事が入ってて帰りが18時になるけどそれでもいいか?」

「勿論!」



今から楽しみ過ぎてそわそわする。


何を着て行こうかな。やっぱり、花火大会と言ったら浴衣だよね?


でも、私浴衣持ってないし……


でもでも、初めてのデート。
皐月に可愛く思われたい。


ここはせっかくだし、奮発して買っちゃおうかな……



「何楽しそうな顔してんの?」

「え?私、そんな顔してた?」

「してた。何考えてた?」

「ふふ。内緒」

「俺に隠し事とは生意気だな」



「言えよ」と、頬を抓られる。
でも、全然痛くない。


抓られてるっていうより、ぷにぷに頬の感触を楽しまれてる感じで少し擽ったい。



「絶対言わないもん」と皐月の胸を押し返すも、本気で逃げる気はない私。



こういう時間、凄く好き。


ずっとこんな穏やかで幸せな時間が続けばいいな……










ーーーーこの時、私は身が引きちぎれるような運命が刻一刻と迫っていることに気付いていなかった。








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