落ちてきた天使
どれぐらいこうしてるだろう。
皐月の肩に頭を預けて、次々に打ち上がる花火を遠い目で見つめる。


思いっきり泣いたから少し頭が重い。
今は何も話す気になれないし、皐月も何も聞いて来ない。

でも、言葉を交わさなくても目を合わせなくても、側にいてくれるだけで心が通じ合えてる気がして心強かった。



そして、最後の一発が夜空に打ち上げられる。

夜空に咲いた花はジリジリジリと微かに火花の音を鳴らしながら枝垂れて、消えたーーー。




「終わっちゃった……ね」

「ああ……」



二人の声が静けさを取り戻した公園に響いた。


外灯は二つ。
公園の端と端にあるけど、ここは高台なだけあって月光で夜でも明るいため、外灯はその意味をなしてない。

横を見れば皐月の憂いを帯びたような横顔が月光ではっきりと見えて、私の心臓はドキッと跳ね上がった。


今日は、満月のようで満月じゃない。


月を見上げる皐月の顔が儚げに見えるのは不完全な月のせい?それとも、花火の余韻のせい?




花火は終わったのに、一向に立ち上がろうとしない皐月。



多分、皐月は気付いてる。
私が全てを話す覚悟をしていることに。


何故だか、今の皐月は私の言葉を待っていてくれてるような気がした。



ベンチの座面に突いた皐月の手に自分の手をそっと重ねる。


皐月はビクッと肩を揺らして私を丸い目で見ると、すぐにふっといつもの穏やかな笑顔で私の手を握り締めた。




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