落ちてきた天使
『あの娘さん、養子でしょう?本当の子供じゃないのよね?』

『そうそう。施設から引き取ったって聞いたわ』

『それって孤児だったってことでしょう?気の毒だけど…』

『結果的に遺産貰えたんだもの。羨ましいわよね』

『ホントホント。しかも、ここの夫婦は親戚もいないから全部あの子のものよ?お医者様だったし相当な額になるんじゃない?』

『ついてるわねー。少しは分けてほしいぐらいよ。真っ当に生きてる私達が馬鹿みたいだわ』



火事のあとのお父さんとお母さんの葬式の日。廊下を歩いていたら偶然トイレから聞こえてきた言葉の数々。

今でも、思い出すと悲しい気持ちになる。


あの時、私は聞きたくなくて耳を塞いだ。
一緒にいた施設長は、涙を流しながらトイレに入っていって反論してくれたけど、言った本人達は知らん顔。

自分達が放った言葉が、どれほど人を傷付けるかなんて考えてもない。

あれを話してたのは、お父さん達が亡くなるまでは良くしてくれてた近所の人達だった。

お金が絡むと人は変わる。

あれから、近所の人達は私と目を合わさなくなった。



「気にしてないって言ったら嘘になります」



私はお金なんて欲しくない。
お父さんとお母さんさえ生きていてくれたら、どんなに貧しくたって構わない。


けど、周りはそうは見てくれない。


人のお金で大学まで行けて良かったわね、って言われてもないのに、あの近所の人達の厭らしい笑い声まで聞こえてくる気がした。




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