落ちてきた天使
私の頭がおかしいのかな……
こんな冷酷な話、現実にあるの?

政略結婚だの跡取りだの……子供をただの道具にしか思ってないじゃない。

勝手な大人達のせいで皐月や佳奈恵さんの人生が狂わされた。こんなのあんまりだよ……



「何も知らない三橋が高校生になった時、全てを伝えられた。本当の母親のこと、どうして家族がバラバラになったのか。真実を聞いた三橋は、本当の母親のことを知りたくなって色々と調べた。そして、俺に辿り着いた」

「それで会いに来たってこと?」



皐月は静かに頷く。
そして、躊躇いがちに口を開いた。



「……俺の存在を知って一度こっそり会いに来たらしい。同じ境遇の子供がどんな感じなのか興味があったんだろ。そこで一目惚れして……父親の三橋社長に頼んで、俺の父親とコンタクトを取った。俺の知らないところでどんどん話が進んで、勝手に親同士が決めた婚約者にさせられてたってわけ」



しん、と静まり返る空気。

佳奈恵さんが婚約者になった経緯はわかった。

でも、話を聞き終わっても全然スッキリしない。むしろ前よりもモヤモヤしてる。


皐月にとってこの婚約は勝手に決められたものだけど、佳奈恵さんにとっては違う。

佳奈恵さんは皐月を好き。

その事実は変わらないんだ。


胸の奥に矢が刺さったように痛い。
痛くて痛くて、辛い。



人を好きになるって、凄く幸せなことなんだと思ってた。

毎日が楽しくて、色付いで、悲しいことも辛いことも無縁なんだって。

でも違う。
人を好きになるって、幸せなことばかりじゃない。

苦しいこと、辛いことも沢山ある。

嫉妬、独占欲が生まれ、感情のコントロールが上手く出来なくなる。

私と皐月が上手くいくことで、誰か傷付く人がいるかもしれない。


それでも私は皐月が好き。
皐月といれて幸せだし、ずっと一緒にいたいと思ってる。

苦しいことがあってもいい。
辛いことがあってもいい。

皐月といれるなら、どんな感情も受け入れる。






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