落ちてきた天使
それは、今から約1時間前に遡る。


『俺の家、来るか?』と言われた私は、小さくコクンと頷いた。

そんな私を見て、『素直じゃん』と微かに笑った松永皐月は私の荷物を奪って歩き始めた。



『あ…荷物……』

『何?』



持ってくれたんだ……
ぶっきら棒だけど、今はその気持ちが嬉しかった。


松永皐月の数歩後ろを歩く。

こんなに細いのに、背中は広くて大きい……

夕焼け空を見上げながら歩くその背中は、夕日で赤く染まってるせいか儚げに見えた。


さっきまで大嫌いな奴だったのに。

誰でもいい。
それが例え、失礼な無神経男でも。

今は誰かと一緒にいたいと思ってしまった。




スーパーに寄って買い物を済ませた後、施設から然程遠くないマンションについた。


セキュリティーは万全。外観、内装はとても綺麗だ。


エレベーターを8階で降りると、松永皐月は一番奥の角部屋に入った。


一人暮らしにしては広い。
パッと見て2LDKはある。


南向きのリビングは殺風景だ。


ブラウンの絨毯と三人掛けの恐らく本革のソファ、ガラスのテーブル、大きめのテレビが置かれている。


対面キッチンは男性の一人暮らしとは思えないほど清潔。食器はきちっと洗ってあって、珍しい調味料が並べてある。


男の人の部屋ってもっと汚いと思ってた。


だけど、男臭さも全く感じない。
想像と全然違う。



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