落ちてきた天使
【何で会いたくないの?まだ好きなんでしょう?】



好き。
嫌いになれるわけない。

皐月以上に好きになれる人なんて現れない。



「好きだからです。会ってしまったら、もう離れられなくなるから」



皐月がどうなったのか、天下一の二人も洋平も気を遣って言わないでくれてる。


それでいい。
佳奈恵さんと結婚してるかもしれないし、してないかもしれないけど、私はそんなの知りたくない。



【そう…わかった。でも、たまには帰って来なさい。一日ぐらい帰って来たってバレやしないわ。うちに泊まればいいんだし。そうだ!合格祝いしましょう。今から電車に乗れば夕方には着くでしょう?】

「ふふ。わかりました。今から帰ります。ホント、女将さんには敵わないな」



じゃあ後で、と電話を切る。

今日はちょうどバイトはない。
明日も夕方からだし、今日は天下一に泊まって朝帰ってくれば十分間に合う。


私はくるっと体の向きを変えて、その足で電車に乗った。





この街に戻って来たのは、皐月の家を出た日以来だ。

ドキドキする。
まだ一年5ヶ月しか経ってないのに、物凄く懐かしく感じた。


一応、変装のためにマスクをつける。
施設関係者や万が一皐月にでも会ってしまったら、この我慢し続けた一年5ヶ月が水の泡だ。


天下一は駅から近い。
すぐに店に行けばいいんだろうけど、久しぶりに帰ってきたのに手ぶらで行くわけにはいかない。

お土産でも買って行こうと、天下一とは別の方向に足を進めた。




「ありがとうございました」



新しく出来たケーキ屋を見つけ、そこの一番のオススメのチーズケーキを買って店を出た。

時刻はちょうど小学生が下校する時間。

通学路になっている店の前の道には、ランドセルを背負い黄色い帽子を被った小学生が元気に走っていく姿が見られた。




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