落ちてきた天使
この瞳から逃れられる人がいるんだろうか。


芯がスッと通った強い光を宿った瞳。


嘘はつけない。
誤魔化しもきかない。


それぐらいこの人の瞳は綺麗だ。



「…違わない」



私はずっと無理してきた。


失う怖さを、私は誰よりも知ってる。

大切な人は皆、私の前からいなくなってしまった。


“さっきまで笑い合ってたのに”

“さっきまでここにいたのに”


何度身と心が引き千切れそうなぐらい涙を流してきたか。



だから私は、もうあんな想いをしないために。
私の不幸に誰かを巻き込まないように。


人との間に一定の距離を置いて生きるようになった。


本心を隠して壁を作って、ずっとずっとずっと我慢してきたんだ。


だけど、その我慢が自分が思ってるよりもずっと大きく重くなっていたんだと、今日一日で思い知らされた。


もう一人では抱えきれないほどに。




本当はずっと欲しかった。


絶対に無くならない幸せ。


絶対的な愛がーーー。





だけど。



「違わないけど、私には無理なの」



喉の奥から絞り出した酷く掠れた声。


今までもこうやって自分で言い聞かせてきた。

自分の本当の想いとは正反対の言葉を口に出して。



私だって普通でいいから幸せになりたい。

でも、私が望むとそれは儚く消えてしまう。

それが現実。


私の人生で、大切なものが消えなかったことなんて一度もなかった。



「無理?」



男の顔からスッと表情が消えた。

温度が低くなった目を細め、私の言葉を待っている。


どんなに誤魔化しても無駄だって言ってるかのような威圧的な瞳に、ゴクッと唾を飲んだ。



まただ……この瞳の引力に吸い込まれて、口を開いてしまいたくなる。


だけど駄目。
この瞳に負けて想いを全てぶちまけてしまったら……


その先を考えると凄く怖い。



俯いて、下唇を噛み締める。


何のためにこの町に戻ってきたのか。
思い出すんだ私‼︎

流されちゃいけない。

求めたらいけない。

そう決めたばかりじゃないっ……‼︎



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