落ちてきた天使
中は静かだ。
忍び足で中に進むとソファにその姿を見つけて、思わず息を飲んだ。



「……っ、」



カーテンの隙間から朝日が入り込み、スポットライトのようにソファで寝ている松永皐月を照らしている。


綺麗だと思った。


元々顔は整ってるし、モデル並にスタイルが良い。下手な芸能人よりも目を惹く。


そんな人にスポットライトを浴びせたら、ドキドキするのは女子としては当然だ。


松永皐月が起きないように、ソファの横に膝をついてその顔を覗き込む。


長い睫毛を伏せ、微かに寝息を立てている。
昨晩の獣のような顔からは想像出来ないほど、穏やかな寝顔だ。



「昨日は本当にありがとうございました」



顔を少し寄せ、囁く。


最初はムカつく奴だった。
今もそれは変わらないけど、全部が全部悪い人だとは思わない。


この人がいなければ私は今も落ち込んで泣いていたかもしれない。


野宿して、体も心もボロボロになっていただろう。


本当に感謝してる。



「もう会う事はないと思うので、お元ーーーっ、きゃあっ‼︎」



お元気で、と言い終える事なく、それは私の驚きの叫びに変わった。


突然腕を掴まれたと思ったら勢いよく引き寄せられ、目の前にはさっきまで長い睫毛を伏せていたはずの整った顔がある。



「っ、起きてたの⁈」

「何処に行くつもり?」



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