落ちてきた天使
「ねぇ、いい加減行き先ぐらい教えてよ」



私達は朝食を食べた後、家を出て車に乗り込んだ。


皐月は私が何度聞いても「お前は黙ってついて来ればいい」の一点張り。


私はほぼ諦めて助手席のシートに身を沈めた。



「昔この辺に住んでたんだろ?」



家から少し車を走らせると、皐月は前を向いたまま淡々と聞いてくる。


人の質問には答える気がないくせに、ホント自分勝手な奴。


そう思いながらも、「まぁね」と答えて窓の外に目を向けるとそこには懐かしい景色があった。



「あ…あのパン屋」



前方にママと弟とよく買いに行った赤い三角屋根のパン屋がある。


ってことは反対側には公園があるはず。


車が走る中、急いで目を移すとちょうど公園の前を通り過ぎる所だった。


遠くなる公園とパン屋をリアガラス越しに見つめる。


一瞬しか見えなかったけど、昔とは何にも変わらない公園の姿に胸が詰まる思いがした。


やがてそれが見えなくなると、シートに座り直して前を見据える。



「まだ早いし、ちょっと寄り道するか」

「え?何処に」



皐月は案の定何も答えず、突然左に曲がるとやがて車を路肩に停めた。



「ここ…小学校?」



皐月が私を連れてきたのは、私が通っていた小学校だった。



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