落ちてきた天使
暫くして何処かの立体駐車場に入ると、皐月が車を降りた。


続いて降りて先を歩く皐月について行くと、そこはショッピングモールだった。



「何か買うの?」

「お前の」

「私?」



皐月は私を見ずに言うと、高校生には到底手が届かないブランドショップに入った。



「選べよ」

「え?」

「服」

「でも…」



選べって言われても…


ぐるりと店内を見渡す。


どれも私には似合わなそうな高価でハイセンスな物ばかりだ。



「選ばないんなら勝手に俺が選ぶぞ」

「え?ちょっとっ‼︎」

「身長は?」

「158…、じゃなくて」

「靴のサイズは?」

「24センチ…って、ちょっと待ってよ!」



皐月は私が止める間もなく服と鞄、靴をどんどん手に取って行く。


そのスピードに圧倒されてしまうほどだ。



皐月は手一杯の商品を「全部買います」と言って、レジカウンターにバサッと置いた。



「ねぇ、待ってってば!私、こんなに買えないよ」

「あのなぁ、お前に出させるわけねぇだろ?」

「なら、尚更こんなに、」

「いいから。気にすんな」

「気にするよ!皐月はよく知らないのかもしれないけど、ここのお店凄く高いんだよ?」

「平気だからお前は黙ってろ」



皐月は私の言葉を一蹴すると、財布からカードを取り出して「一回で」とキャッシュトレーに置いた。


私はすぐにキャッシュトレーを手で覆い隠す。



「黙ってられないっ!買ってもらっても受け取れないよ」

「お前、俺に恥かかせるつもりか?」

「そうじゃなくて、」

「じゃあ何なんだよっ!」




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