落ちてきた天使
「で?なんで皐月まで着いてくるの?」



今の私はかなり顔が引きつってると思う。


それもこれも全部、皐月の意味不明な言動のせいだ。




朝食を済ませた後、皐月に学校まで送ってもらうことになった。


わざわざ送ってくれなくても一人で行けるって言ったのに皐月は聞く耳を持たず、半ば強引に助手席に座らされて。


『少しは甘えろっつったろ』なんて言いながら頭をポンポンと撫でられた。


子供扱いしないでよ……


なんて思いつつ、ほんの少し嬉しくて。
ニヤけた顔を隠すために流れる景色に目を向けた。



送ってもらうって言っても、当然学校の近くまでだと思っていたのに、皐月は車を高校の来客用の駐車場に停めた。


そして、有ろう事か皐月も車を降りると、私よりも前を歩いて職員玄関から中に入って行ってしまったのだ。


『ちょっと…っ!』と止めるも完全無視。


皐月が事務員に声を掛けると校長室に案内された。


事務員が『少々お待ち下さい』と部屋を出て行く。


その時を待ってました、と言わんばかりになんで着いてきたのか問い詰めると皐月は口角を上げて私を見据えた。



「お前の反応が楽しいから」



は…はいぃぃぃっ⁉︎
全くもって意味がわからないんですけど!


楽しいからって何?


そんな馬鹿げた理由でこんな所まで着いてきたの⁉︎



開いた口が塞がらない。


意地悪な言葉の裏には優しさがある、だなんて。私の見当違いだった?



言い返そうと「あのさぁ、」と口を開きかけた時、私より先に皐月のククッと堪えるような笑い声が聞こえた。




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