落ちてきた天使
朝のホームルームで自己紹介を済ませると、空席だった窓際の一番後ろの席に座った。


先生の話は来週の学期末テストの日程の事。


あー。学期末テストかぁ、なんて他人事のように聞き流していると、隣りの席から異様に視線を感じて恐る恐る目をやった。



その瞬間、バチっとぶつかる視線。


栗色の髪を無造作にセットし、バッチリと眉毛を整えた男子は、いかにも軽そうというかチャラく見える。


ワイシャツのボタンは二つも外しちゃってるし、ネクタイなんて緩く締めていてだらしが無い。


私の苦手なタイプだ。


とりあえず笑って流しておこうと思い苦笑いを浮かべると、その男子は何を考えてるのか、ニコッと白い歯を見せた満面の笑みを向けてきた。



ドキッと心臓が跳ね上がる。


カッコ良くてとかそういう良い意味じゃなくて、悪寒が走るとかそんな意味の高鳴りだ。


ぞわぞわっとした。


瞬時に関わらない方が良い、と私の勘が働いて咄嗟に顔を逸らした。



すぐにホームルームが終わると、ザワザワうるさくなる教室。


まだ視線を感じる。
これはとりあえず逃げといた方がいいかも……


そう思い立って、椅子を引こうとした時。



「あーちゃん、だよね?」



隣りから意気揚々とした声が聞こえてピタリと動きを止めた。


あーちゃん…?
それは確かに私の事だ。


昔、施設にいた時に私は施設の皆からそう呼ばれていた。


施設の人しか“あーちゃん”なんて呼ばないのにどうしてこの人が?



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