落ちてきた天使
「施設にいた時の同級生と同じクラスだったよ」

「へぇ」

「なんか凄く嬉しかった。私の事覚えててくれて。懐かしい話、沢山しちゃった」

「そっか。良かったな」

「私はあんまり覚えてなかったんだけど、洋平は事細かく覚えててね」



大きい豚肉を箸で半分に切り分けながら、洋平との再会を思い出して、つい「ふふふ」と笑みが溢れてしまう。



あんな可愛かった洋平が、今じゃその影もなく、クラスでは盛り上げ役みたいな立ち位置なんだもん。


チャラチャラしてそうだけど、実は真面目で勉強は出来るらしいし。


おまけにモテると来たら、昔を知ってる私が驚くのも無理はないよね。



「あの時ああだった、この時はこうだったって。もう十年も前の小学生の時のことなのによく覚えてるよね」

「……洋平?」



話に夢中で気付かなかった。


それまで機嫌良く相槌を打ってくれてた皐月の姿は何処にもなく。


眉間に皺を寄せながら、鋭く光る瞳で私をジッと見据えているなんて。



「皐月も知ってるんじゃな、」



私は顔を上げると、ハッと息を飲んだ。
ドクンッと激しく心臓が跳ね上がる。



「同級生って前川洋平のこと?」



声が低い。地を這うような、そんな声だ。


私を縛り付けるような眼光に身動き出来なくなる。



「さ、皐月……?どうしたの?」

「洋平と仲良いんだ?」

「仲良いというか……同じ施設の出身だから、その……」



何…?なんで皐月は怒ってるの?


皐月の威圧的な言葉と態度に、悪いことをしてるわけじゃないのに口籠ってしまう。




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