落ちてきた天使
「洋平がどうかした?」


そっか……
皐月も洋平のことは当然知ってるよね。


もしかして、洋平と仲が悪いとかそういうこと?



「別に」

「別にって……じゃあなんで怒ってるの?」



意味がわからない皐月の態度に、徐々に苛立ちが募って言い方がきつくなる。



「怒ってねーよ」

「怒ってんじゃんっ」

「だから!怒ってーーー」



私の言葉に被せるように皐月が声を荒げる。


私がビクッと首をすくめると、皐月はハッと一瞬目を見開いて言葉を飲み込んだ。



すっかり料理は冷めてしまった。


シンと静まり返った部屋に、はぁ、と皐月の溜め息が聞こえた。



「女だと思ってたのに……相手が、男だったから…」



ボソッと籠もる声で皐月が言う。


思わず「え?」と返すと、皐月は真っ赤な顔で私を横目で見据えた。



「だから!お前が洋平とのこと楽しそうに話すからムカついたんだよ」



そう言って、気まずそうに視線を泳がせる皐月。


それって…つまり、ヤキモチ……?



「ーーーんなっ‼︎な、何言って…っ」



ボッと一気に顔が熱くなる。


同時に頭に浮かぶ、昨日の皐月の言葉。



『彩が欲しい』


『覚悟しろよ?俺は手加減しない』


『欲しいと思った物は、絶対に手に入れる。どんな手を使っても』


『俺がお前に絶対的な愛をくれてやるよ』



あれはいつもの冗談でも何でもなく、本当に本当の……皐月の本音だったってこと?




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