落ちてきた天使
「ここは賃貸じゃない。ローンも払い終わってる。故に、家賃は発生しない」

「え?そうなの?」

「ああ、ついでに言うと管理費や税金すらも俺は払ってない。払ってるのは駐車場代ぐらいだ」

「どうして?」



よくわからないけど、持ち家なら固定資産税っていうやつを払うんだよね…?


例えローンが払い終わったとしても、マンションなら管理費だって駐車場代同様に毎月掛かるはずだし。


払わなくていい、なんてことあるの?



「ここは親父の家みたいなもんだから」

「お父さんの?」

「俺が18歳になった時、買ってくれたんだよ。だから名義は親父。管理費も税金も親父が払い続けてる」

「皐月だけここで暮らしてるの?」

「ああ。簡単に言えば、この家は親父から俺への贖罪ってとこだな」



贖罪?罪滅ぼしってこと?


マンションを買い与えることが皐月への罪滅ぼしって一体どういうことだろう。


“なんで?”、“どうして?”


疑問ばかりが頭に浮かぶ。


でも、私の頭の中を一番占めてるのは皐月にお父さんがいたという事実だ。


皐月も私や洋平同様、家族はいないんもんだとばかり勝手に思ってた。



でも、お父さんがいるのにどうして施設にいたんだろう。


家族がいるのに施設に入所する理由は、経済的理由、親の健康上の理由、それから愛情面での理由の三つの内のどれかに該当する事が多い。


皐月の場合、経済的理由も健康上の理由も当て嵌らない気がする。


経済的な理由で入所してくる子供の親は、食費や光熱費さえ払えない人がほとんどなのに、皐月のお父さんはこうやってマンションを買い与えてるし。


健康上の理由で止むを得ず施設に入所したんだとしたら、贖罪なんてしないと思う。


って、私の想像は皐月の施設入所の理由とお父さんの贖罪が関係してるならの話だけど。



…でも、もし関係してたら。
皐月の施設入所の理由は愛情の問題の可能性もあるわけだ。



< 97 / 286 >

この作品をシェア

pagetop