お姫様はメイド服!?
部屋に戻ったレオンは,閉じたドアに寄り掛かった。

「俺,何をしてんでしょう…」

カグヤに差し出した方の手を,片方の手で握った。
まだ,温かさが残っている。

目を閉じれば,カグヤの顔が瞼の裏に写る。

なんなんだろう…
この感じ…

カグヤの笑った顔。
悲しそうな顔。
怒った顔。
安心した顔。
嬉しそうな顔。

全てが,スライド写真のように浮かび上がってくる。

ギュッと抱き締めた時の,壊れそうな小さな体。
綺麗で,キラキラしていた彼女の涙。
レオンと呼ぶ声。
決意した時の,誇らしげな表情。

全てを守りたい。
この命をかけてでも,姫を守りたいんだ。

なんだろう…特別な感情が,俺の中にある。
これ,何ていうんだろう…。

その時,腰あたりに,優しい温もりを感じた。
落ち着く…そんな温もりを…。

「カ…グヤ…??」

カグヤと呼べないのは,何故かわからない。
ただ,胸の奥で,何かがつっかえるのだ。

もし,成功したら…
カグヤと呼ぼう…。

レオンは,そう決意した。
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