だって、キミが好きだから。


みんな頑張ってるんだ。


好きな人に振り向いて欲しくて、気持ちを込めたチョコを用意して。


バレンタインは年に一回の女の子が頑張る日。


バスに乗っている女子がみんな、いつもよりオシャレをして気合いが入っているように見えた。


あたしも……もう少し女の子らしくして来れば良かった。


可愛くしてくれば良かった。


そしたら少しは張り合えたのに。



あたしは……あたしは。


それすらも許されないんだ。


みんなと同じなのに。



……ツラいな。


本当はあたしだって、みんなと同じように渡したい。



なんであたしなの……?


なんで?


あたし、なにもしてないじゃん!


ただ普通に生きてただけなのに。


どうして……病気になったのがあたしだったの?


病気にさえならなかったら、琉衣に想いを伝えられたのに。


病気にさえ……ならなかったら。


最近、そんな風に考えてしまってばかりで嫌になる。



目頭が熱くなって、視界がボヤける。



溢れた涙が握り締めた拳の上にポトッと落ちた。



ダメダメ。


泣き止まなきゃ。


強くならなきゃいけないの。



闇に呑み込まれそうになる心に喝を入れる。


こんなことで泣いてちゃダメだよ。

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