だって、キミが好きだから。


バスを降りてから、うつむきながら歩いた。


足が鉛のように重い。


売店に寄ってから教室までの道のりをトボトボ歩いていると、後ろから来た人にどんどん追い越された。


他のクラスの前を通った時、突き刺さるような視線を感じて居心地が悪くなる。


そこから早く逃げたくて、思わず早歩きになった。


琉衣が教室に来るようになってから、あたしは女子の注目の的になってしまった。


付き合っているんだと勘違いされるのもしょっちゅうで、何を言われているのか不安でたまらない。


きっと……似合わないとか言われてるんだろうな。


でも、その通りだよ。


あたしには、琉衣はもったいなさすぎる。



そんな風にネガティブにしか考えられないのは、まだ暗闇から抜け出せてなくて心が荒んでるからだ。


こんな自分は嫌なのに、どうすればいいのかわからないよ。



「菜花。はよー」



廊下の踊り場の前を通った時、ふと耳に入った琉衣の声に足を止める。


琉衣はあたしに向かって片手を挙げると、優しく微笑みながら近付いて来た。


オレンジ色の髪がふわふわ揺れて、着崩した制服が琉衣の魅力を引き立てている。


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