だって、キミが好きだから。


「腫瘍だよ、良性の。それが脳を圧迫してるの。大きくなればなるほど色んな症状が出て……記憶を失くしちゃうんだって」



ポロポロと涙が溢れた。


ガマンしようとしてみてもどうにもならなくて。


ポタポタと芝生の上に溶け込んで行く。



「は……?意味わかんねー。なんだよ、それ」



さっきと同じように琉衣の目が戸惑うように揺れている。


理解出来ない、話を呑み込めないと言いたげだ。



「だから腫瘍だって……!あたしの頭には……大きな異物があるの。手術をして取り除けないこともないけど、そうすると脳へのダメージがかなり大きくて。思い出も経験も……全部忘れちゃうかもしれないって」



ギュッと握り締めたダウンの裾。


気付くと手が震えていた。



「だから……ごめんね。琉衣とは付き合えない。じゃあ……っ」



反応を見るのが怖くて琉衣に背中を向けた。


ネガティブにしか考えられないのは、良い返事が返って来るわけないって決め付けてるからだ。


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