だって、キミが好きだから。
授業の合間の10分休憩中、この前の席替えであたしの前の席になった萌奈が振り返って話しかけて来るのはいつものこと。
基本的にあたしは聞き役で、萌奈がひとりであーだこーだと言っている。
オシャレの話だったり、流行りの恋愛ドラマやアイドルの話だったり。
萌奈はどこからそんなに話題が出て来るんだってほど、たくさんの引き出しを持っている。
だけどーー。
「萌奈は好きな人いないの?」
「好きな人〜?」
怪訝に眉を寄せる萌奈は、あたしの質問にピタリと動きを止めた。
そう。
萌奈はたくさん引き出しを持っているけど、自分の恋愛に関しての話だけは絶対にして来ない。
人のことは聞きまくるくせに、萌奈に聞くといつもはぐらかされてばかりだった。
だからあたしは、萌奈の恋愛話をほとんど知らない。
モテるのに彼氏を作らないのは、過去に何かあったから?
朔真君は未だに萌奈にアタックしてるけど、振り向く気配がないから半分諦めかけている。
とは言っても、朔真君は色んな子とも遊んでるみたいだから萌奈に本気じゃないんだろうけど。