だって、キミが好きだから。


「おいおい、まさか忘れたのかよ?そんなに昔のことじゃないのに」



冗談っぽく笑いながら朔真君があたしの肩を軽く叩く。


その手の感触がやけにリアルで、心臓がドクッと嫌な音を立てる。



忘れた……?


忘れちゃったの……?


記憶自体がないんだから、それすらもわからない。



うそでしょ……?


冗談だよね?



記憶がないのに、その人に見覚えがあるって変な感覚だ。


見覚えがあるのに何も思い出せない。


忘れたっていう感覚がないから、本当に忘れたのかも曖昧で。


でも、朔真君が知っているからには本当のことなんだと思う。


だけど、どうしても半信半疑のまま真相はわからなかった。



写メを食い入るように見つめていると、ゴツゴツした大きな手に急に視界を遮られた。



「他の男のこと見すぎ」



スネたような声が聞こえて顔を上げた。


< 175 / 343 >

この作品をシェア

pagetop