だって、キミが好きだから。
「おいおい、まさか忘れたのかよ?そんなに昔のことじゃないのに」
冗談っぽく笑いながら朔真君があたしの肩を軽く叩く。
その手の感触がやけにリアルで、心臓がドクッと嫌な音を立てる。
忘れた……?
忘れちゃったの……?
記憶自体がないんだから、それすらもわからない。
うそでしょ……?
冗談だよね?
記憶がないのに、その人に見覚えがあるって変な感覚だ。
見覚えがあるのに何も思い出せない。
忘れたっていう感覚がないから、本当に忘れたのかも曖昧で。
でも、朔真君が知っているからには本当のことなんだと思う。
だけど、どうしても半信半疑のまま真相はわからなかった。
写メを食い入るように見つめていると、ゴツゴツした大きな手に急に視界を遮られた。
「他の男のこと見すぎ」
スネたような声が聞こえて顔を上げた。