だって、キミが好きだから。
ガラにもなくあんな紙切れを靴箱に入れて昼休みまでソワソワして落ち着かなかったのだって、ただちょっと緊張してただけ。
そう。
男心をくすぐられただけで、別にそこまでのめりこんではいない。
それなのになぜかヒリヒリと痛む胸。
くそっ。
とにかくもう、早く忘れよう。
振られるなんて初めての経験に、心がついていかないだけだ。
ショックとか悲しいとか。
女に振られたぐらいで、俺が思うわけねーだろ。
ありえねーんだよ……んなことは。
明日になれば忘れられる。
別にそこまで好きじゃなかった。
一目惚れっつっても、ちょっと可愛いなって程度だったし。
北上レベルの女なら、他にいくらでもいる。
そう。
女は他にいくらでもいるんだ。
何度も自分にそう言い聞かせる。
そうでもしないと、ヘコみそうだったから。
それから北上と一言二言適当に言葉を交わしたあと、踵を返して校舎の中に入った。
ーーガラッ
力が入り過ぎて、教室のドアが大きな音を立てて開いた。
その音にビックリしたのか、クラスメイトが一斉に俺に視線を向ける。