だって、キミが好きだから。


繋いだ手にギュッと力を込めると、琉衣も必ず同じように返してくれる。


そんでもって、そのあと何事もなかったように前を向いて知らん顔をしている琉衣。


だけど、その顔は少し赤く染まっていて。


あたしはそれを見て思わずクスッと笑ってしまう。



そんな何気ないささいな一瞬が好き。


すごく好き。



「今日、何の映画観よっか?」



「恋愛映画が良いんだろ?」



「え?なんでわかったの……?」



あたし……言ったっけ?


映画の話なんてしてないよね?



「なんでって……昨日」



驚いたように目を見開く琉衣に眉を寄せる。



「昨日……?」



昨日、そんなこと言ったっけ?


まったく身に覚えがない。



食い入るように琉衣を見ていると、一瞬だけ悲しそうに目を伏せたあと、すぐに何事もなかったように口元を緩めて微笑んだ。


そんな琉衣を見て、何かあるんじゃないかって不安になる。



「言っただろ?菜花の顔見りゃ、考えてることなんて丸わかりだって」



コツンとおでこを小突かれ、さらに強く腕を引っ張られた。


琉衣の手が震えているような気がするのは気のせいかな。


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