だって、キミが好きだから。
そう言われても、覚えていないっていう事実が胸に突き刺さったまま消えてくれない。
涙がこぼれ落ちそうになるのを、唇を噛み締めて必死に耐えた。
「ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃねーから」
「う、うん……でもっ」
忘れちゃってたのは事実だから、それがたまらなく怖かった。
「菜花は悪くねー。悪いのは……俺だから。ごめんな」
琉衣は悲しそうに目を伏せた。
ドクンと胸が鳴る。
あたしだ。
あたしのせいで琉衣がこんな顔をしている。
ダメだよ。
もっと強くならなきゃ。
何にも動じない心を持たなきゃいけない。
たとえ忘れたって、それを笑い飛ばせるほど強くならなきゃ。
そしたら琉衣を不安にさせることもないから。
「い、行こっか。ストラップとか……何かペアの物が欲しいな」
琉衣の目を見てニッコリ微笑む。
お願いだから、笑ってよ。
琉衣のそんな顔を見たくないんだ。
「ムリに笑うなよ。俺の前で強がる必要なんてねーから」
「……っ」
「頼りないかもだけど、ツラいなら俺に全部ぶちまけてくれていいから。な?」
顔を覗き込まれ、頭を優しく撫でられた。
優しい手の温もりが胸にしみる。
「う……うん。ありがとう。あたし、前にも覚えてなかったことがあったの……ともきっていう中学の同級生らしいんだけど……っ」
話しかけられても、誰だか全然わからなかった。
それだけじゃない。
色んなことを忘れてる。