だって、キミが好きだから。


お袋は早速、帰って来たオヤジに真っ先に俺のことを報告した。


いちいち何でも言わねーと気が済まないらしく、普段ほとんどオヤジと会話なんかしないのに俺のことは何でも知られている。



「そうか。振られないように頑張れよ」



無口なオヤジからの俺へのひとこと。


なんで振られることが前提みたいな言い方をするんだよ。



親が呼び出されたなんて知ったら、菜花は引くんだろうか。


そんなことをモンモンと考えていたらいてもたってもいられなくなって、夜遅くにドラッグストアに向かっている俺がいた。



黒染めを買って家に帰ったあと、オレンジ色だった髪を真っ黒にした。


別にお袋に言われたからってわけじゃねーし。


菜花のことを考えたら、この方が合ってんじゃねーかなって思ったから。


そもそも、オレンジにも飽きて来たところだったしな。



洗面所が真っ黒になったってお袋がブツブツ言ってたけど、更生した俺に満足したのかそこまでは怒られなかった。


< 228 / 343 >

この作品をシェア

pagetop