だって、キミが好きだから。
「あら〜!いらっしゃい〜!待ってたのよー、遠慮せずに上がってちょうだい!琉衣斗、ボサッとしてないでスリッパ出してあげて」
お袋は菜花を見た途端、よそ行きの声を出してニコニコ笑い出した。
なんだよ、いつもと違う声とその態度は。
よくもそこまで変われるもんだな。
なんて若干シラけた気分になりつつも、スリッパを菜花に差し出した。
「あ、あたし北上菜花って言います!!こ、これ!パウンドケーキなんですけど、良かったら皆さんでどうぞ」
菜花がぺこりと頭を下げながらお袋に紙袋を差し出す。
「あらー、気を遣わせちゃってごめんなさいね!琉衣斗ったら昨日いきなり言うもんだから、私もビックリしちゃって!大したお構いは出来ないけど、ゆっくりして行ってちょうだい」
「あ、ありがとうございます……っ!」
ここで初めて、菜花はようやく安心したような顔を見せた。
「それにしても、菜花ちゃんって本当に可愛いわね〜!」
「えっ!?そ、そんなっ。可愛いだなんて」
お袋は好き嫌いがはっきりしてるタイプだけど、どうやら菜花のことはかなり気に入ったらしい。