だって、キミが好きだから。
黒が好きって言ったことは、忘れちまったんだな。
菜花とは色んなことを話したけど、いったいどこまで覚えてくれているのかはわからない。
大丈夫だって言い聞かせてるけど、目の当たりにするとやっぱりショックはでかい。
けど菜花の方が苦しんでいるはずだから、俺がショックを受けるのは間違っている。
「おい、テーブルの上を漁るなよ」
「えへへっ、ごめんね。気になって」
ベッドにもたれるようにして床に座った菜花は、それでもまだキョロキョロして辺りを見回している。
そんなに珍しいのかよ、俺の部屋が。
ヤバいもんはちゃんと隠したから大丈夫だ。
それでも、そんな菜花に思わずクスッと笑っちまった。
「あ、琉衣……!この映画観に行ったの?ズルい〜!面白かった?」
テーブルの上の雑誌に挟んでいた映画のチケットを見つけた菜花が、チケットのタイトルを見て目の色を変える。
チケットを見ると、それは1ヶ月記念日に菜花と観た映画だった。